塗料の知識 Knowledge of Painting 「色」を通して、社会に、人に、潤いと感動を。塗料の知識 Knowledge of Painting 「色」を通して、社会に、人に、潤いと感動を。

  • 塗料の基礎
  • お役立ち情報
  • 塗料の歴史

塗料の原材料

塗膜になる成分

樹脂

塗料を構成する主原料です

  • 〈合成樹脂〉

    アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ふっ素樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ニトロセルローズ樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、合成樹脂エマルジョン樹脂、水溶性樹脂など

  • 〈油脂類〉

    亜麻仁油、大豆油、サフラワー油、トール油、桐油、ひまし油、やし油など

顔料

塗料に色を付けたり、塗膜に防錆性等機能を持たせたり、塗膜に厚みを持たせたりするために使用します。

  • 〈着色顔料〉

    酸化チタン、亜鉛化、カーボンブラック、酸化鉄(黄土・べんがら)、シニアンブルー、シニアングリーン、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット、キノフタルロンイエローなど

  • 〈さび止め顔料〉

    亜鉛末、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウムなど

  • 〈体質顔料〉

    炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム、シリカなど

  • 〈その他〉

    アルミニウム粉、光輝性マイカ、蛍光顔料、赤外線反射セラミックス、ガラスビーズ、導電性顔料など

添加剤

塗料、塗膜に要求される機能を発揮させるために、少量の添加で性質を変化させるために使用される。

顔料分散剤、湿潤剤、増粘剤、顔料沈降防止剤、重合禁止剤、消泡剤、静電塗装性改良剤、タレ防止剤、色分かれ防止剤、ハジキ防止剤、レベリング剤、可塑剤、防かび剤、紫外線吸収剤、光安定剤など

塗膜にならない成分

溶剤

樹脂・油脂類を溶解または分散させ流動性を与えるために使用される。

〈有機溶剤、水〉

石油系混合溶剤、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、IPA,セロソルブ類、MEK、MIBK、酢酸エチル、酢酸ブチルなど

塗料の製造からお届けまで

塗料は主として樹脂・顔料・添加剤・溶剤を練り合わせて製造します。最近の技術進歩よる合成樹脂の多様化と塗料化生産技術の発達で、同じ合成樹脂塗料でも性質や性能を作り分けるようになってきました。生産にはコンピューターによる高度な管理が導入されています。
また、でき上がった製品は、JITの納入とリードタイムを短縮した供給体制を整備し、お客様から要求のある毎に新しく高品質な塗料のデリバリーにお答えしています。

塗料の製造プロセス

塗料は前練→分散→調合→調色→ろ過→検査→充填という製造工程を経てでき上がります。

  • 〈前練工程〉

    樹脂や顔料、溶剤を混ぜ、均一なミルベースをつくります。

  • 〈分散工程〉

    前練りしたミルベースを分散機に送り、粒子を細かく分散します。

  • 〈調合工程〉

    分散完了したミルベースに必要な原材料を添加します。

  • 〈調色工程〉

    原色を加えて調色します。

  • 〈充填工程〉

    でき上がった塗料を検査完了後、ろ過し容器に充填します。

上田の活動プロセス

塗料製品は、当社を経て、JITとリードタイム短縮を実現した供給プロセスに乗せて、「必要なものを必要な時に必要な数だけ」何時も安定的にお客様にお届けします。

  • 〈マーケットインの塗料設計〉

    お客様からのご要求にあわせて、ラインの状況を一番知っている上田の技術員が、塗料設計段階でメーカーと協力してご要求を反映した塗料でマーケットインを実現します。

  • 〈入庫〉

    リードタイムを短縮したフレッシュな製品が入庫します。

  • 〈保管〉

    ロット管理・期限管理を行ない、見える化を実施し、安全に配慮して保管しています。

  • 〈受注〉

    お客様より、EDI・メール等で注文が入ります。

  • 〈出庫〉

    注文がきた製品を正確に出荷します。

  • 〈納入〉

    お客様の必要な時に必要な量を納品しています。

  • 〈最適な塗膜づくりの技術支援〉

    お客様のニーズに合わせて、ご要望に応えられるようライン作りを共に進めてまいります。どうぞご利用ください。

塗装前処理

塗装前処理

塗装の目的を達成するためには、塗膜が被塗物表面にしっかりと付着し、かつ平滑で緻密であることが必要です。被塗物表面が汚染していたり、脆弱な層があったりすると、十分な付着力が得られません。また、被塗物の表面に凸凹があると、これを平滑にしないと美観のある平滑面が得られません。塗装前処理はこれらの問題点解決のために行われます。ここでは、工業的に多く用いられる金属の表面状態と塗装前処理剤(金属洗浄剤・除錆剤・化成処理剤)について説明します。

1.金属の表面状態

大気中ではほとんどの金属が酸素と反応し、金属表面は製造直後から自然発生的に酸化被膜で覆われています。熱間圧延工程(550℃以上)ではミルスケールと呼ばれる酸化鉄、冷間圧延工程(常温)では酸素・水などの存在下で水和酸化鉄の皮膜が生じます。これらの酸化鉄(錆)は脆弱な層であり、錆層が残ると塗膜との付着を著しく阻害します。また、錆層は水、塩化物イオン、硫化物イオンなどの腐食促進物を吸着しやすく、金属の腐食を促進します。一方、アルミニウムは酸素との親和性が強く表面に緻密な防食性の強い酸化被膜(白錆)が発生しますが、やはり空気中の酸素や水を吸収し易く塗膜の付着性が弱くなります。

また、型材や板材の加工された被塗物となる金属は、複雑な熱履歴など加工される過程で表面の組成や結晶状態、夾雑元素の編析状態等が変化します。そのため表面は内部よりも表面エネルギーが大きく、異種物質を吸着したり反応し易くなります。成型加工前に潤滑・加工油塗布や錆発生防止のため加工油や防錆油が塗布され表面が汚染状態になります。

2.金属の塗装前処理・化成処理

リン酸塩処理は化成処理の代表的な方法の一つで、鉄鋼や亜鉛などの金属表面にリン酸亜鉛などの金属塩の薄い皮膜(ミクロンオーダー)を生成させるものです。リン酸亜鉛処理の他にリン酸鉄処理、リン酸カルシウム処理、リン酸マンガン処理等があります。

その工業的目的は、古くは道具、武器などの金属製品の錆防止でした。近年は、塗装下地として塗膜が剥離しにくくすること、塗膜に傷が付いても錆が広がらないようにすることを目的とし、自動車を始めとした工業製品に広く標準的な方法として採用されています。

なお、リン酸塩処理の標準的な工程は、
①金属表面の洗浄(アルカリ脱脂剤)→②水洗→③除錆→④水洗→⑤中和→⑥水洗→⑦表面調整→⑧処理(リン酸塩処理浴)→⑨水洗→⑩乾燥(熱温風)
で、スプレーまたは、浸漬法により実施されます。薬剤を使用するのは①、③、⑤、⑦、⑧の工程で、通常、処理効果促進のため加温されます。また、そこでの処理時間は1分未満から数分、場合によって10分以上かけることもあります。代表的には⑧の処理剤としてリン酸亜鉛処理剤が多く用いられ、出来上がった結晶が塗膜の付着と防錆性に寄与します。(「リン酸亜鉛処理の結晶」写真を参照)
リン酸塩処理後に、塗装目的の場合は電着塗装、下塗り溶剤塗装が同一ライン内で直ちになされ、更に引続き必要に応じて上塗り塗装まで実施されます。

リン酸亜鉛処理の結晶写真

  • フルディップ処理での結晶
    一般に板状結晶と呼ばれる(フォスフィライトZn2Fe(PO4)2)リッチの皮膜構造

    フォスフィライトリッチの皮膜構造のほうが塗装後耐腐食性に優れる

  • スプレー処理での結晶 一般に針状結晶と呼ばれる(ホパイトZn3(PO4)2)リッチの皮膜構造)

代表的な塗装方法

工業ラインの塗装方法

  • 〈静電スプレー塗装〉

    塗装物(+)に対し、噴霧状にした塗料を(−)極に帯電させ電気的に塗着させる方法で、塗着効率が良く連続塗装として広く用いられる。

  • 〈電着塗装〉

    水溶性の塗料液中に被塗物を浸漬し、被塗物と塗料の間に電流を流して電気的に泳動させ塗膜を作る。塗膜が均一でロスが少ないなどの利点がある。

  • 〈粉体スプレー塗装〉

    粉体をコロナ放電による正電荷電(−)や摩擦帯電(+)により印加させ効率よく被塗物に塗着させる。ドライブースで回収装置や色替え装置を合わせて適用する。

  • 〈カーテンフロー塗装〉

    コンベアによって運ばれてくる被塗物の上にスリッドカーテン状に流化させて塗布する。高速塗装が可能であり、平らな被塗物に適する。

  • 〈ロールコーター塗装〉

    コーティングロールの上に一定の厚さの膜を作り、それを被塗物に転写する方法で平板の塗装に用いる。カラー鋼板のような厚みの一定な被塗物に適する。

  • 〈ディッピング塗装〉

    塗料タンクに被塗物を浸漬させて引き上げ、余分な塗料を垂れ切る塗装方法である。膜厚が不均一になり易い。

  • 〈エアスプレー塗装〉

    圧縮空気で塗料を霧化し被塗物に吹き付ける代表的な塗装方法。最近は塗着効率向上のため低圧霧化方式等が増えつつある。現場施工でも広く用いられる。

  • 〈エアレススプレー塗装〉

    塗料自体に高圧をかけて噴射する塗装法で、大型の被塗物に厚膜で塗装するのに適する。現場施工でも広く用いられる。

現場施工の塗装方法

  • 〈刷毛塗り〉

    刷毛に塗料を含ませて被塗物に塗る、ごく一般的な塗装方法。

  • 〈ローラーブラシ塗り〉

    スポンジ状のローラーに塗料を含ませて直接被塗物に展開させ塗り拡げる方法。

  • 〈吹き付け塗り〉

    口径の広いノズルを用い、噴出する塗料の量や圧力を調整して、さまざまな凸凹模様を表す。主に建築塗装で用いる。

  • 〈こて塗り〉

    粘度の高い塗料を仕上げ目的に応じていろいろな形状に仕上げる。主に建築塗装に用いる。

1.ゴミブツ撲滅作戦

塗装ラインでのゴミブツ不良対策・撲滅作戦の事前準備から調査方法、具体的な対策についての進め方等、多くの塗装ラインでの実績があります。

(1)ブツ不良の実態

  • ①検査不良率データ → 各項目内訳(ブツ、はじき、スケ、・・・・・・・・・)
  • ②ブツ不良の規格 → 大きさ、分布、高さ、部位別差別
  • ③塗料材料別ブツ発生率(工程、メーカー詳細)
  • ④塗料材質、塗料工程別ブツ発生率
  • ⑤ワーク部材種とブツ発生率
    <塗色別、工程別、ワーク別にブツの偏りがないか>

(2)ライン構成とワークの流れ

  • ①ワーク成型から塗装ラインへの投入期間
  • ②ワーク成型から塗装ラインへの持ち込み方法
  • ③ワークの下処理方法
    ブラスト処理/化成処理/除塵方法
    <下地の持ち込みブツはないか>
  • ④プライマー~中塗り~上塗りの塗装工程
    塗装タイム、塗装時間と塗装間隔、塗装機構成
    コンベアスピード、タクトピッチ、膜厚、マシーン種、コンペア方式
    霧化圧、回転数、ガンスピード、ガン距離・・・・・・・・・
  • ⑤塗装状態
    霧化状態 → ダストの飛散 → ブース内汚染状況
  • ⑥ライン全体レイアウト入手
    <塗装ブース周辺でブツを発生させたり、呼び込んだりしていないか>

(3)ライン環境

  • ①ライン各工程の温湿度と管理方法
  • ②ライン各工程の風速と管理方法
    <ライン環境でブツを浮遊させていないか>
  • ③検査工程の人員、検査環境(照度)、検出方法
    <ブツの見落としや検査のバラツキはないか>

(4)ラインでのブツ削減対応状況

  • ①ブース内粘着ワニスの有無
  • ②作業者の服装管理
  • ③湿度確保のための対応
  • ④ブース周辺供給エアーの管理方法
  • ⑤下地ワーク持ち込みブツの管理方法
    などすでに実施していることとその管理方法(頻度)
    <管理不足のため効果を発揮していない対策はないか>

(5)塗料管理

  • ①塗料供給方式
    ポンプ種、サーキュレーション規模、配管材質、ろ過機能
    撹拌方法と基準、液温
  • ②メンテナンス期間
    洗浄期間、洗浄方法、色変え頻度
  • ③調合時の管理
    希釈率、粘度測定方法、ろ過方法
    <塗料に原因はないか>

ゴミブツ発生原因の対策と特製要因図

2.塗膜ハジキ・へこみ対策

塗膜の欠陥の中でハジキとへこみは比較的多くのラインで発生します。最も対策が困難な欠陥の1つでもありますが、種類・原因・対処への考え方および対策を解説します。

ハジキとへこみは外観が似ていて、多くの場合原因が同じです。ハジキは下地まで達するくぼみで、へこみは下地に達しないくぼみです。この現象は被塗物表面で生じ外観が円形のものと不定形のものがあります。

形態 ハジキの
種類
原因 対策
(1)円形
(A)環境
ハジキ
塗装環境から飛来したシリコーン油ミスト等塗料よりも表面張力が小さい油滴、または塗料が濡れない固体粒子が未硬化塗膜に付着して起こる。 このタイプのハジキには、塗料の表面張力を下げること、環境の中にあるハジキの原因である塵挨やミスト(例:シリコーン油、機械油、他塗料ミスト等)が被塗物表面に付着したり、塗料を汚染するのを防止することが有効である。
(B)自己
ハジキ
塗料に内在する塗料よりも小さい物質が、微少な液滴あるいは粒子として未硬化塗膜の上に浮上して起こる。 はじく恐れのない添加剤を使用する。
塗料の粘弾性を調整することも有効である。
(2)不定形
(C)濡れ
ハジキ
表面張力が小さい物質による汚染で、下地表面にムラがある場合に起こる。 塗装前処理を十分に行い被塗物を清浄にすることが有効である。
現象によっては、ウエスでの拭き取り、サンドペーバーで表面を軽く研磨する程度でも対策できることもある。

3.色むら・色違い

現象 欠陥名 原因 対策
塗膜の色が部分によって異なる 色むら 塗料中の顔料が凝集している時に、塗装時のせん断応力のばらつきで、塗布した膜に色分かれが発生する。
また、顔料の着色力は分散粒子径により異なるので、塗装時の応力の掛り方で色味が異なる。
顔料を安定して分散し、凝集を起こさせないようにする。
せん断力は塗装方法により異なるので刷毛、ローラー、スプレー等異なる方法の組み合わせで同一個所を塗装しない。
塗膜の色が浮きまだらで色ムラになる 浮きまだら 不均一な溶剤蒸発が起こる塗膜では、表面の温度や表面張力が異なるため、塗膜内部で渦巻き対流が発生する。
塗料中の顔料も同様に対流するため顔料の種類の差で分離し、塗膜表面に色むらが発生する。
添加剤で界面活性能を持つものを添加する。
溶剤型塗料ではシリコーン油、シリコーン油と有機樹脂の共重合物を添加すると効果的である。

4.わき

現象 原因 対策
塗膜の表面に泡の抜け後が残って噴火口状の突起ぶつが塗膜に残る わきは塗膜に侵入した泡が塗膜外に抜けにくく、塗膜のレベリング性も不十分なため起きる。
原因の泡は加熱乾燥時の溶剤の突沸、塗装時に巻き込まれた空気、下地に含まれていた空気が塗膜に移行する等である。
多量の溶剤分を含んだまま塗膜の粘度が上昇すると溶剤の上層への移行ができずに加熱乾燥時に突沸してわきになる。
  • (1)シンナーの選択:焼付乾燥時に硬化が進み塗膜の増粘が始まる前に溶剤が抜けるようにシンナー蒸発速度のバランスを取る。
  • (2)焼付時の急激な昇温を避ける。
  • (3)塗膜の溶融粘度を下げるために、少量の高沸点溶剤を添加する。
  • (4)スプレー時の泡巻き込みが多い時は、粘度を下げたり、適当な消泡剤を添加する。
  • (5)下地の気孔からの泡は低粘度で浸透性の良い塗料を前処理的に塗布するのが有効である。コンクリート・モルタルへのシーラーコート、ジンクリッチペイント塗膜上へのミストコート等。

5.塗膜の剥がれ

現象 原因 対策
塗膜の付着が悪く、塗膜の一部あるいは全部が剥がれる
塗膜の各層間の場合と、被塗物素地からの場合とがある
  • (1)被塗物表面が油・水などで汚染されている場合。塗料の塗れ障害によって剥がれる。
    浮き錆等が表面に残っていて脆弱槽内で剥がれる。
  • (2)前工程で塗られた塗膜が硬化不足の場合、上から塗布した塗料の溶剤によって下の塗膜が膨潤・溶解して剥がれる。
  • (3)加熱乾燥型の場合、指定の乾燥時間を超えて過度に高温や長時間乾燥した場合。
  • (4)エポキシ樹脂塗料やフタル酸塗料などの常温乾燥型塗料で塗装後過度に放置したり、強制乾燥を過度にした場合、表面が硬くなり過ぎて、その上に塗布した塗膜が付着阻害で剥離する。
  • (1)塗装仕様書に示された脱脂・除錆等の前処理を確実に行うことが肝要である。
  • (2)この現象はリフティングと呼ばれる。
    常温乾燥型塗料で起こり易く、この現象が起きないよう仕様書に示す塗り重ねまでの時間で作業する。
  • (3)この現象は塗膜の架橋が進行しすぎたために起こると考えられる。併せて、オーバーベークや長時間の放置で塗膜が酸化、あるいは光劣化して泥弱層表面が形成されるため剥がれ易くなるものと考えられる。
    現実的な対策として表面をサンドペーパーで軽く研磨する、あるいは溶剤でワイピングすることで付着性は改善できる例が多い。
    いずれにしても過度の硬化を発生させないように塗装仕様書条件で作業をすすめる。

6.塗膜の割れ

現象 原因 対策
塗膜に不規則な割れが発生する
割れは表層だけ(浅割れ)と下層まで及ぶ場合(深割れ)がある
軟質の下層の上に硬質の塗装をした場合、上層の乾燥時に生じる収縮応力で割れが発生する。
下層が十分乾燥していない時に上層を塗装すると、上層の塗料溶剤が下層に移行して上層同様の割れを生じる場合、割れの応力が大きいと下層まで及んで深割れとなる。
塗装後早期による割れは、塗膜構成や塗装作業による場合が多い
割れが発生すると修復することができない場合が多く塗り替えが必要になる。
割れが発生しない塗装工程の設計(仕様書の確立)と工程管理が必要である。

日本の塗料関連の出来事

塗料の起源と、日本への伝来(~1872年)

社会の
出来事
西暦
(年)
和暦
(年)
塗料関連の
出来事
    旧石器時代~ 日本の塗料は、漆(うるし)塗りから始まる
木の蔓で編んだ籠に漆を塗った容器があり、アスファルトが下塗り剤として使われた
丹土(朱)、黄土(黄)、鉛丹(白)、緑青(緑)、黒土(黒)などで、寺院等の建物が塗られた
    縄文
時代~
孝安天皇の代に、三見宿弥という人が器に漆を塗って、宮中に献上した
米国ペリー特使来日 1853 嘉永
6年
 
米国ペリー特使再来日 1854 安政
元年
日本に塗料が伝来
日米和親条約交渉を行う交易談判所に、油性塗料を塗装した
「我国塗装発祥之地記念碑」(横浜市元町公園内)は、江戸の渋塗職人町田辰五郎による日本で初めてのペンキ塗装を記念して建てられた碑である。開港百年祭を機に、1958年(昭和33年)に建立された
  1866 慶応
2年
外国商館による塗料の販売が始まる
明治維新 1868 明治
元年
東京遷都 1869 明治
2年
  1871 明治
4年
「ペンキ」の用語が初めて横浜毎日新聞に登場
新橋~横浜間鉄道開通 1872 明治
5年
新橋駅・横浜駅を輸入塗料で塗装

日本の塗料産業の始まり(1874~1926年)

社会の
出来事
西暦
(年)
和暦
(年)
塗料関連の
出来事
  1874 明治
7年
東京開成学校(現、東京大学)に、ドイツ人ワグネル博士が招かれ、その助手であった茂木春太と彼の弟重次郎を指導して、顔料および塗料の研究を開始した
  1881 明治
14年
日本の塗料工業の始まり
茂木春太・重次郎兄弟が、東京に光明社(現、日本ペイント株式会社)を創立
  1885 明治
18年
塗料が日本で特許第1号を取得
堀田瑞松が農商務省工務局の専売特許所(現、特許庁)へ「堀田錆止塗料および其塗法」を出願し、特許取得
日清戦争始まる 1894 明治
27年
 
官営八幡製鉄所開設 1897 明治
30年
茂木重次郎が「亜鉛華錆製法」で特許2842号を取得
日露戦争始まる 1904 明治
37年
明治中期から大正初期にかけて、塗料メーカーが次々と設立された
大正の初めには輸入塗料はほとんど姿を消した
第一次世界大戦始まる 1914 大正
3年
 
  1918 大正
7年
玉水弘が、尼崎市西宮町に、関西ペイント工業所(現、関西ペイント株式会社)を創業
世界大戦講和成る 1919 大正
8年
 
  1920 大正
9年
第一次世界大戦後の恐慌で事業を整理する会社が続出
関東大震災 1923 大正
12年
関東大震災後の復興需要で盛り返す
  1926 大正
15年
硝化綿ラッカー(セルバ)の工業化

戦後、塗料産業の復興(1927~1949年)

社会の
出来事
西暦
(年)
和暦
(年)
塗料関連の
出来事
米国リンドバーグ大佐大西洋横断飛行成功 1927 昭和
2年
 
  1929 昭和
4年
フェノール樹脂塗料の開発
満州事変 1931 昭和
6年
統制経済により、塗料工業も軍需産業に組み込まれる
フタル酸樹脂塗料の開発
  1933 昭和
8年
塩化ゴム塗料の開発
湯川秀樹が中間子論発表 1935 昭和
10年
 
第二次世界対戦始まる 1939 昭和
14年
 
  1945 昭和
20年
工場数は69、焦土の中で再開した塗料の生産量わずかに1万トン
  1948 昭和
23年
メラミン樹脂塗料の開発
  1949 昭和
25年
酢酸ビニルエマルジョン塗料の開発

新技術の開発と用途の拡大(1950~1965年)

社会の
出来事
西暦
(年)
和暦
(年)
塗料関連の
出来事
朝鮮戦争勃発 1950 昭和
25年
塗料生産量8万トン
対日講和条約締結 1951 昭和
26年
エポキシ樹脂塗料、紫外線硬化塗料、塩化ビニル樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料の開発
  1952 昭和
27年
静電塗装機、赤外線乾燥炉の開発
造船ブーム 1955 昭和
30年
経済の高度成長の波に乗り、塗料の生産量が飛躍的に増大し始める
塗料の生産量15万トン
東海村に原子力の火灯る 1956 昭和
31年
 
世界初人工衛星スプートニク1号打上げ 1957 昭和
32年
2液型ポリウレタン樹脂塗料の開発
エアレス塗装機の国産化
エアスプレー法の研究発表
岩戸景気 1959 昭和
34年
焼付け型水溶性アクリル樹脂塗料の開発
  1960 昭和
35年
タールエポキシ樹脂塗料の開発
塗料生産量34万トン
  1962 昭和
37年
エポキシジンクプライマーの開発
コロナ帯電式静電粉体塗装機の開発
東京オリンピック開催 1964 昭和
39年
 
東海道新幹線開通
  1965 昭和
40年
塗料生産量60万トン

国内塗料産業の最盛(1967~1990年)

社会の
出来事
西暦
(年)
和暦
(年)
塗料関連の
出来事
公害対策基本法公布 1967 昭和
42年
塗料工業の排水、排気、廃塗料、廃溶剤の処理などの規制が強まる
無機系ジンクリッチプライマーの開発
アポロ11号月面着陸 1969 昭和
44年
高温焼付け型フッ素樹脂塗料の開発
大阪万博開催 1970 昭和
45年
塗料生産量106万トン
大気汚染防止法の一部改正 1972 昭和
47年
 
第一次石油ショック 1973 昭和
48年
 
高度成長時代終わる
  1975 昭和
50年
ロボット塗装の開発
第二次石油ショック 1979 昭和
54年
 
円高による海外進出の増加 1986 昭和
61年
 
本州・四国連絡橋「瀬戸大橋」開通 1988 昭和
63年
シリコンアクリル樹脂塗料の開発
塗料生産量200万トンの大台を突破
東欧の民主化進む 1990 平成
2年
塗料生産量220万1千トンを達成
この年をピークに、バブル経済の崩壊などによる景気の後退が始まり、長い低迷の時代が続く

国内の成熟とグローバル展開(1994年~)

社会の
出来事
西暦
(年)
和暦
(年)
塗料関連の
出来事
関西国際空港開港 1994 平成
6年
阪神・淡路大震災 1995 平成
7年
PL法が施行になりMSDSの提供が義務化される。
米国同時多発テロ勃発 2001 平成
13年
 
イラク戦争とその復興混迷 2003 平成
15年
改正建築基準法(シックハウス対策規制)施行により、塗料業界ホルムアルデヒド自主管理制度開始
  2004 平成
16年
塗料業界VOC排出自主取り組み発表
愛・地球博開催 2005 平成
17年
原油価格高騰
  2006 平成18年 塗料へのGHS適用開始
  2007 平成
19年
塗料へのREACH規制施行
世界同時不況 2008 平成
20年
 
日本での政権交代 2009 平成
21年
塗料生産高148万トン(1990年以降最低)
東京国際空港国際線ターミナル開港(羽田) 2010 平成
22年
国内塗料メーカーの海外生産量が国内生産量を上回る
東日本大震災 2011 平成
23年
東京スカイツリー開業 2012 平成
24年
  2016 平成
28年
JIS規格から環境対策で鉛含有塗料が廃止される
  2017 平成
29年
JISに遮熱塗料評価規格制定される